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独が年長の親戚たち(墺含む)にさりげなくかわいがられてたらいいなあ、という妄想のもとに書いた話です。
独が書いた日記、という形式なので、独の一人称進行です。ストーリーらしいストーリーのない小ネタです。





ある日のドイツの日記


20XX年12月XX日 土曜日

0540時
 起床。隣にイタリアがいないことを確認。鉢合わせを避けたい相手が来ているのでほっとした。

0610時
 日の出前に犬の散歩をしていると、公園でバイエルンに会った。彼の自宅は大分遠いのだが、ベルリンに出張でもあったのだろうか。まだ始発の時間ですらなかったのだが。挨拶をしたらぶっきらぼうに返してきた。ベルリンは辛気臭いので早く地元へ帰りたいそうだ。別にベルリンでなくたって、真冬の薄暗い時間帯に滞在していたらそんな気分になるのは当然だろうに。
 その後寒風吹きすさぶ中、三十分ほどプロイセンに対する文句を延々聞かされたあと、水筒に入れたホットコーヒーを渡された。エコ指向ですばらしい。

0730時
 朝食。起きてくる気配がないが、とりあえず二人前つくっておいた。

1000時
 外出。出かける前に声を掛けようと思ったが、気持ちよさそうに寝ていたので起こすのはやめて、朝食と一緒に書置きを残しておいた。

1230時
 昼過ぎ、書店からの帰り道でザクセンに話しかけられた。どうしてもほしい本の在庫が地元になかったので、わざわざこちらまで出てきて探していたということだ。せっかくだからビニール本の一冊でも買ってやろうとの申し出を受けたが、丁重に断った。何を考えているんだあのひとは……。
 その後お互い買った本の話をしながら、軽食店で昼飯を食べた。おごってくれた。今度会ったらおごろうと思う。忘れないようにしよう。

1430時
 帰宅途中にオーストリアに出くわした。マイナーな楽譜を求めて遠路はるばる……という本人の主張だったが、道に迷ってウチまで来てしまっただけだろう。仕方なく駅まで送っていったのだが、ホームを思い切り間違えていたので、結局俺もホームへ入り、オーストリアが車輌に乗り込むところまできっちり見届けた。国境を越えるような迷い方はするなと忠告したら、去り際に顔が赤くなるほど怒りながらこのお馬鹿さんがと罵られた。なんだか理不尽な気がしたが、世話を焼かれてプライドに触ったのかもしれない。やつの迷子癖はいまにはじまったことではないと思うのだが。
 列車に乗っている間はいいが着いてからが心配なので、ハンガリーに連絡を入れておいた。

1720時
 夕方また犬の散歩をしていると、自転車で爆走するヴュルテンベルクの姿を見かけた。挨拶しようにもできない雰囲気だったが、あちらも俺に気づいたらしく、自転車で突進してきた。少々怖かったが、衝突する前にちゃんと止まってくれた。バイエルンに用事があって探していたらしい。今朝方会ったと伝えると、なぜか舌打ちした。何かあったのだろうか……。
 近況について少々会話したのち、再び自転車に乗って去っていった。自動車はおろか公共交通機関すら使わず人力での移動にこだわる環境配慮の姿勢にいたく感動した。ただあまりに速いので、スピード違反で捕まらないか気がかりだ。車と衝突したらドライバーのほうが怪我をしそうだ。

1930時
 晩になるとブランデンブルクが訪ねてきた。ジャガイモを三箱持ってきた。そろそろ在庫が減ってきただろうということで、わざわざ気を回してくれたようだ。夕飯がまだだと言うと、つくってくれた。何もそこまでしてくれなくていいのだが……。
 ブランデンブルクが料理をしている間に、自室へ行ってベッドで寝こけているプロイセンを起こした。昨日仕事を終わらせたその足でロシアからここまで飛んできたということで、ゆうべから俺の部屋でゴロゴロしている。結局一日中だらけた生活をしていたらしい。まあ休日だし、仕事と移動で疲れているようだからゆっくり休むのもいいだろう。そう思って特にどこへも誘わず寝かせておいたのだが、放置されたのが気に入らなかったのか、なぜ起こさなかったと文句を言われた。夕方まで起きてこなかったのは不貞寝の意味もあったのだろうか。それから、午後にオーストリアに偶然会ったことを話すと、案の定不機嫌になった。そして八つ当たり気味に俺をどついてきた。本気でないのはわかっているが、それなりに痛かった。
 ブランデンブルクはプロイセンの滞在を承知していたようで、彼の分の夕食もつくってくれていた。その後三人で食卓を囲んだ。なかなかうまかった。いいイモだった。ブランデンブルクといちゃついているうちにプロイセンは機嫌を直した。ありがとうブランデンブルク。心から感謝する。しかし、ふたりで物を食べさせ合っているだけならいいが、俺にまで食べさせようとするのはやめてほしい。もう子供ではないのだから。

 今日はよく親戚たちと顔をあわせた。まあ……悪いものではないな、こういうのも。
 明日も休みだし、たまには彼らを食事にでも誘ってみようか。先ほどから一緒に風呂に入っているプロイセンとブランデンブルクが何かやらかしていないか気がかりだが。いや、何かやらかしているのは確実だと思うが……。










(後日プロイセンからついたコメント↓)
おまえこの身内との遭遇率の高さちっとは疑問に思えよ! ってか、あいつら何やってんだ!? 過去の日記見る限り、ほぼ毎週こんな感じじゃん! 少しはおかしいと思え!
あとおまえイタリアちゃんに夜這いされてんのか!? ずるいぞなんで俺も呼ばないんだ! 三人だっていいじゃん!


(ドイツからの返信↓)
なんであなたが俺の日記にコメントつけてるんですか! しかも赤ペンで! 小学校の提出物ではないんですよ!? プライベートなものをチェックするのはやめてください。これは交換日記ではありません。

(さらにプロイセンからの返信↓)
わざわざ日記に俺宛の返事書くなんて、俺に読んでくださいって言ってるようなもんだぞ。ってか、俺が誰かわかるのかよ、名前なんて残してないぞ。
あとおまえなんで書き言葉だとそんなよそよそしい文になるんだ? あの腐れ坊ちゃんみたいだからやめろ。


(さらにドイツからの返信↓)
やっぱりまた読んだんですね! どうしてそういうことするんですか! こういうことするともう家に入れませんし、遊びにも行きませんから。場合によってはそちらの上司(※ロシア)に相談させていただきます。
それから、あなたが誰かは文面を見ればわかります。筆跡を変えても無駄です。

(プロイセンのうっかり返信↓)
それだけは勘弁してくれ!! 頼むから!!
……って、書いちゃったよおい! まじでごめんほんとごめん俺が悪かった! だから告げ口はやめろぉぉぉ!!






※その後、ドイツがけっこう本気で怒っていることを察したプロイセンは、コメントを残すのをやめたという。あと、夢にご先祖(ゲルマンさん)が出てきて、いい加減にしろと叱られ、反省のために地獄の筋トレメニューをやらされたらしい。


独は文字で普に話しかけるとき、なぜか敬語になる(墺みたいな口調になる)という変な設定です。

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