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引き続き仏普とも普仏とも取れそうな話です。
まったくえろくないですが、一応ベッドでうわーな内容で、すごく品がないので、あらかじめご了承ください。ギャグだと思っていただければ幸いです。
苦手な方は絶対この先にお進みにならないようお願いします。

しょっぱなベッドなので、一応下げます。
OKな方はスクロールで↓





















ギブ・アンド・テイク



 枕を背に当てて坐位と臥位の中間のような体勢のプロイセンは、太股に当たる長めの金髪がこそばゆくて、もぞりと肩を揺らした。
「フランス、もうよせ。これ以上は労力の無駄遣いだぜ?」
 彼は脚の間にあるフランスの頭髪に指を絡めると、ぐっと上を向かせた。顔を上げたフランスは、むぅっと眉をしかめている。
「でも、まったくなんも変わってないんだけど、これ。ほんとに元気ないなー。こんだけがんばってんのにノーレスポンスってのはちとへこむんだが……別に俺のやり方が悪いわけじゃないよな、おまえの体が特殊なんだよな」
「だから、最初からそう言ってるじゃねえか。別にいまにはじまったことじゃねえよ」
 プロイセンは、もはや嘆くことも放棄し諦観の境地に達しているらしい。
「なんかもう、この状態に慣れてる感が悲しいな」
「長いこと反応なしだからな。正味な話、性的快感とやらがいかなるものなのか思い出せなくなってきてんだぞ」
「うっそ、まじでか!?」
 何気に落とされた爆弾発言に、フランスが素っ頓狂な声を上げる。
「そんな、それじゃおまえ、人生どうやって楽しむんだよ!? 俺だったら死んじゃう!」
「おまえだって五、六十年もこんな状態が続けば嫌でもそうなるぜ。いかにフランスと言えども、な」
 プロイセンはぽんとフランスの肩に手を置いた。
「うわー、おまえ同情はいらないっつったけど、そんなこと聞かされたら絶対同情しちゃうって」
「うっせーよ」
「そんじゃおまえ、半世紀もご無沙汰なわけ?」
 なんとなく流れで尋ねてみたのだが。
「……………………」
 プロイセンはあからさまに顔ごと視線を逸らすと、そのまま沈黙してしまった。
「……聞かないほうがよかったみたいだな」
 気まずくなりかけ、フランスは場の空気を緩ませるように、にへら、と小さく苦笑した。
 と、プロイセンがフランスの肩を掴み、自身の脚から離させようとする。
「おい、ほんとにもういいから。代われ」
「え?」
「俺の番だ」
 言いながら、プロイセンは自分が転がっていた位置にフランスを引き寄せる。フランスは彼に引っ張られるままにベッドの上を移動したが、ちょっと意外そうに目をしばたたかせた。
「え、おまえがやるの、俺に?」
 フランスが確認すると、プロイセンはきょとんとして首を傾げたあと、
「順番制じゃないのか?」
 何かこう、こういう場所で聞くのは不自然なんじゃないかと思える単語を発してきた。
「何その制度!? 知らないっ、フランスのおうちにそんな制度はない!」
 動揺するフランスに、プロイセンは痺れを切らして膝立ちになると、彼の脚を跨いだ。
「あー、もう、いいから代われっつってんだよ。されっぱなしじゃ落ち着かない。俺はマグロじゃないんだぜ」
 無駄にかっこよさげな風格さえ漂わせながら告げるプロイセン。フランスとて、その心情を理解しないではなかったが。
「いや、しかしだな」
「安心しろ。感染症は患ってねえよ。もし万一なんかあったとしても、我がドイツ医学が味方だ。なんら心配は要らない」
 プロイセンは自信たっぷりに断言した。
「そうか、それは安心だ……じゃなくてぇ! なんかこれおかしくないか」
 脚の上にどっかりと乗っかったプロイセンの背を、フランスがぱしぱしと叩く。一方プロイセンはなんらおかしいと感じていないらしく。
「何がだよ?」
 おまえの言い分はわからん、もっとはっきり言え、とプロイセンは額に皺を寄せて見せた。
「いや……だっておまえ無反応じゃん?」
「仕方がねえだろがっ! 繰り返し言うな! これでも気にしてるんだぞ!」
「なんかなあ、仮にここで俺だけ反応したとしたら、不公平な感じするじゃん? それがちょっとなあ、と思って」
 フランスがちょっぴり殊勝なことを言うと、プロイセンは何をいまさら、と呆れ気味に眉根を寄せた。
「なぁに妙なこと言ってんだ。おまえはもともとそーいう都合のいいやつだろうが」
「いやいや、こういうのは相互利益重視で行きたいのが俺の方針なわけよ」
「ならなおさら今度は俺が働く番だろ。いままでおまえが労働してたわけなんだし」
 フランスの脚の両脇に腕を突っ張り、プロイセンが真面目な顔で見つめてくる。
「その果てしなく萎える表現、なんとかならないのか……って、何やってんだ?」
 フランスの目の前で、プロイセンがいきなりなにやら両手を自分の顔に当て、摘まんだり揉んだりを繰り返しはじめた。怪訝な面持ちで尋ねてくるフランスに、プロイセンは当たり前のように答える。
「ん? 口腔顔面ストレッチ。運動の前はしっかり準備体操しておくのが基本だろ。おまえの、顎疲れそうだし」
「おまえ……体育会系にも程があるぞ」
 なんだろう、この一種異様な雰囲気は。
 呆然としているフランスをよそに、プロイセンは着々とストレッチとやらを進めた。そして、ぱんっと両手の平で自分の頬を叩くと。
「よし、こんなもんでいいか。さて、フランス」
 表情筋をほぐした顔をぐっとフランスに近づける。フランスは思わず首を後ろに引いた。
「なんだよ、そのギラついた目は……な、なんか昔俺を思っくそノしたときの顔とそっくりだぞ!?」
「ああ、そうだな――まあせいぜい覚悟しておけ」
 それだけ告げると、プロイセンはすっと上体を引き、顔をうつむけた。
「うわぁ、懐かしすぎて涙出そう……」
 久しぶりに現役時代の彼の空気を肌に感じ、フランスは嫌な気持ちとともに虚空を仰いだ。
 これといった根拠はないのだが、なぜか胸の内に敗北の予感がひしひしと湧いてきてならなかった。




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